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油を内水・海等で回収する場合

水面に浮いた油を回収除去するとき、場面やニーズによって手段・資材を 賢く使いわけると手間もコストも仕上がりも 大きく改善します。

1.吸着回収

一般によく利用されるものはオイルマットです。しかし 一口にオイルマットといっても 実は種類ごとに性能が大きく異なるので、その特色にあわせて使い分ける必要があります。

オイルマットは「吸着量」が多いものと「吸着力」が強いものに大別されます。(以下 前者を「バルクマット」 後者を「セッターマット」と呼びます。)
 バルクマットは 大量の油を吸いこむ能力に優れます。しかし せっかく吸いこんでも、少しの刺激(流れのある水面に放置する、持ち上げる など)で、油を再放出してしまいます。また、薄い油膜は(ある実験によると油膜の厚さが0.25mm以下になると)吸い取ることができません。
他方 セッターマットは 一旦、吸い込んだ油は再放出しません。また七色に光るような非常に薄い(1μm前後)油膜まで吸い取ることができます。しかし、価格のわりには吸着量は多くありません。
現場の状況にあわせて両者を使いわけることが 迅速で精密な油の回収につながります。
参考までに 両者の違いを表にまとめます。

  セッターマット バルクマット
使い方 オイルフェンスの補助あるいは代用として、
油の流下拡散を止める。
水面に短時間浮かべて油に接触させ、
すぐに水面から引きあげ油が垂れないようにゴミ袋に入れ、
おおまかに油を吸着させる。
数時間~数日、
水面に敷設しつづけて油を吸着させ続ける。
薄油膜を吸着回収させる。
要求される性能 吸着力(負圧)の強さ
浮力(特に油を吸着した後の浮力)の強さ

吸着量の多さ
単価の安さ(取替頻度が高いので)

ここで典型的な油濁事故現場を想定して、バルクマットとセッターマットには役割分担を検討しましょう。
油が水面に浮いている場合、まずはオイルフェンスなどで油の流下拡散を防がなければなりません。
そうすると油は流れや風に押されてオイルフェンスの上流部あるいは内側に溜まります。そこにオイルマットを浮かべれば自然に油はオイルマットに次々に吸着されて回収されるのみならず、水面の流速を下げたり渦の発生を押させたりすることにもなり、油がオイルフェンスを潜りぬけにくくもなるので、このような工法は広く採用されています。

一般的に言えば、セッターマットは、油を吸った後でも、再放出しないので、浮力が保持されます。従って、ひんぱんに取り替える必要がありません。ですから、オイルフェンスのすぐ上流側に浮かべる用途に向いています。
他方、バルクマットは、油を吸った後 流水面に浮かべ続けておくと油を再放出してしまいます。すると水がマットの中にしみこんで、マットの比重は全体として重くなり沈みやすくなります。これが激しいとバルクマットがオイルフェンスの下をくぐって流下し、二次汚染になる危険が高まります。従ってなるべく再放出量が少なく、浮力の強いものを選ぶか、油を吸ったマットはすみやかに水面から引きあげ、新たなマットを敷設しなければなりません。

さて、海では通常は薄油膜の除去までは要求されません。よって油を吸着した後まで浮力が強いものならば、バルクマットだけでも作業できるでしょう。水面を覆う面積が広いシートタイプと、流失しにくいロープタイプがあるので、両者を上手に使い分けて下さい。

他方、河川などの内水は、各種用水に利用されるので、薄油膜の回収まで必要になります。
オイルフェンスのすぐ上流側にはセッターマットを浮かべ、そのセッターマットの上流側にバルクマットを浮かべて下さい。このとき、バルクマットは短時間に油をたくさん溜めて、少しづつ放出するダムのような働きをします。油を吸ったバルクマットを引き上げれば「ダム」ごと多量の油がなくなることになり、少々放出されたくらいの油はセッターマットが余裕をもって吸着回収します。しかもバルクマットを交換する作業がオイルフェンスから離れた位置で行われることになるので、水面を揺らして油をオイルフェンスの下流に流してしまう危険も少なくなります。こうすれば多量の油をより確実に回収することができます。

そのようにして油をおおかた回収した後は、薄く広がったり、虹色に光ったりするような油膜が水面に残ります。その段階になったら、一旦、すべてのオイルマットを引き上げ、新しいセッターマットだけを最後に一度敷設しなおします。なぜならこのような薄い油膜を精密に吸着できるのは、まだ油をたくさん吸っていないセッターマットだけであり、バルクマットでは(たとえ、浮力が強めのものでも)ほとんど吸着回収できないからです。

では、どのようなオイルマットがバルクマット、あるいはセッターマットなのでしょうか。
これは、ほぼ吸着材の素材(主な原材料)によって決まります。

  セッターマット バルクマット
素材 マイクロポーラス(細孔のある)固体 繊維
特に得意な油 軽油、作動油、A重油などの軽質油 原油、C重油などの高粘度油
火災の危険 吸着材は不燃性。
窒息消火作用のあるものもある
燃える

油膜の吸着力の比較実験(動画)

弊社では、セッターマットとして、スミレイオイルマットを御用意しております。

スミレイオイルマット

バルクマットは一般に原料の繊維が細いほど、マットの厚みがあるほど吸着量も浮力も向上します。従って、水面の油をたくさん吸い取らせたいときは、繊維がなるべく細いものや、 厚みがあるものを選ぶとよいでしょう。他方、それほど油量が多くない時は1枚あたり(あるいは面積あたり)のコストのほうを重視してよいこともあります。弊社では、それらのニーズごとにバルクマットを選定して御提案いたします。

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コラム

「型式承認」を通ったオイルマットでないと海では使えない、というのは本当ですか?

確かに オイルマットについては海洋汚染防止法に定められた「型式承認」という制度があります。しかし、この「型式承認」というのは、大型の油輸送船、その船を係留する場所ないし貯油施設に対しては一定数量のオイルマットを備蓄する義務が「海洋汚染防止法」により課されているところ、その備蓄すべきオイルマットの性能・性状を定めた制度にすぎません。
ですから、上記以外の施設や人が海洋の油濁を防ぐためにオイルマットを使用する場合は、型式承認に通ったオイルマットでなくてもかまわないのです。
確かに、海洋は波が荒いなどの特色があるので、頑丈さをテストされている型式承認品が役立つことも多いのですが、型式承認品を使っても役立たない場面(「沈む」「油膜が取れない」などの場合)は、型式承認のない別タイプのオイルマットを使うという発想も必要でしょう。

2.機械的な吸引回収

スピーディに油を回収したいときや、油が細かな砂泥や有機質と混合してムース状態になってしまいオイルマットではなかなか吸着できないようなときには、機械的にスキマーで吸引させることもあります。
ただこれまでのスキマーは、精密に油を回収しようとすると水も多く吸引し、吸引する水の量を減らそうとすると油を吸い残す、という二律背反に悩んでおりました。
弊社では、水面の油分を少量の水と一緒に精密に吸引回収する独自の「コプラ オイルスキマー」を開発しており、また、事故現場で油濁水から油のみを除去してきれいにした水をその場で放流できるようにする携帯型吸着塔「コプラ オイルフィルター」も開発しております。
販売可能となりましたら、このホームページでも御紹介いたします。

3.ゲル化剤による固化と固化した油の回収

油を化学的に固化する粉末ゲル化剤(石油を原料とするポリアクリル酸など)は、主に海洋油濁事故で、油の回収と火災防止の目的で使われることがあります。
但し、油の回収精度が高くなく、薄い油膜までは回収することはできず、ゲル化剤じたいの水没・拡散・流下もあるので、異物混入を嫌う河川湖沼などの内水での油濁事故においては、あまり使用されていません。

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