谷口商会株式会社
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状況別対応チャート

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油を内水または海で回収する場合

水面に浮いた油を回収除去するとき、場面やニーズによって手段・資材を 賢く使いわけると手間もコストも仕上がりも 大きく改善します。

1.吸着回収

一般によく利用されるものはオイルマットです。しかし 一口にオイルマットといっても 色々なタイプがあります。

まず、オイルマットは「吸着量」が多いものと「吸着力」が強いものに大別されます。(以下 前者を「バルクマット」 後者を「セッターマット」と呼びます。)
バルクマットは 大量の油を吸いこむ能力に優れます。しかし せっかく吸いこんでも、少しの刺激(流れのある水面に放置する、持ち上げる など)で、油を再放出してしまいがちです。また、薄い油膜は(ある実験によると油膜の厚さが0.25mm以下になると)吸い取ることができません。
他方 セッターマットは 一旦、吸い込んだ油は再放出しません。また七色に光るような非常に薄い(1μm前後)油膜まで吸い取ることができます。
ここで油膜に対する吸着力の違いを実験動画で確認しましょう。

油膜の吸着力の比較実験(動画)

またオイルマットの浮力にも注意してください。
見過ごされがちなことですが、オイルマットは油を吸着すると浮力が落ちます。
どれくらい落ちるかはオイルマットの素材や形状によって異なります。

まず セッターマットとバルクマットを比べると、セッターマットの浮力が明らかに勝ります。
人工川での実験動画(視聴時間60秒)で確認しましょう。水深は15cm、流速およそ18~28cm/秒です(これはオイルフェンスの限界流速-それを超えるとオイルマットの補助がないと油が漏れてしまう流速-でもあります)。
観察しやすいように、油は赤く着色し、オイルフェンスの代わりに金網でマットの流下を防いでいます。

スミレイ タフネル 比較テスト

実験後に観察すると、金網(オイルフェンス)をくぐり抜けそうになっていたバルクマット(従来型PP繊維オイルマット)は水を吸っていました。

また 同じバルクマットでも素材によって浮力が異なります。これも人工川の実験動画(視聴時間70秒)で確認しましょう。流速はやや緩やかな15~25cm/秒です。

パフィン タフネル 比較テスト

約10分後の状況です。微細繊維オイルマット(パフィンオイルマット)の側の水路の油は ほぼすべて吸着されました。

ここで セッターマットとバルクマットの違いを一覧表でまとめておきましょう。

  セッターマット
使い方 オイルフェンスの補助あるいは代用として、油の流下拡散を止める。
数時間~数日、水面に敷設しつづけて油を吸着させ続ける。
薄油膜を吸着回収させる。
特色 吸着力(負圧)の強さ(精密吸着力)
浮力(特に油を吸着した後の浮力)の強さ
素材 マイクロポーラス(細孔のある)固体
得意な油 軽油、作動油、A重油などの軽質油
燃焼性 吸着材は不燃性。窒息消火作用のあるものもある
  バルクマット
使い方 水面に短時間浮かべて油に接触させ、すぐに水面から引きあげ油が垂れないようにゴミ袋に入れ、おおまかに油を吸着させる。
特色

吸着量の多さ
単価の安さ

素材 繊維
得意な油 原油、C重油などの高粘度油
燃焼性 燃える
  セッターマット バルクマット
使い方 オイルフェンスの補助あるいは代用として、
油の流下拡散を止める。
水面に短時間浮かべて油に接触させ、
すぐに水面から引きあげ油が垂れないようにゴミ袋に入れ、
おおまかに油を吸着させる。
数時間~数日、
水面に敷設しつづけて油を吸着させ続ける。
薄油膜を吸着回収させる。
特色 吸着力(負圧)の強さ(精密吸着力)
浮力(特に油を吸着した後の浮力)の強さ

吸着量の多さ
単価の安さ

素材 マイクロポーラス(細孔のある)固体 繊維
得意な油 軽油、作動油、A重油などの軽質油 原油、C重油などの高粘度油
燃焼性 吸着材は不燃性。
窒息消火作用のあるものもある
燃える

次に典型的な油濁事故現場を想定して、バルクマットとセッターマットには役割分担を検討しましょう。

水域での油流出事故現場は、現場が内水(河川、湖、池、側溝など)かによって大別できますが、通常はいずれにおいてもオイルフェンスで油の流下 や拡散を防ぎます。
しかしその先は、内水とでは適切な対応が異なります。

では油の回収除去がそれほど精密には要求されません。従って バルクマットだけでも作業ができます(ただし 油を吸着した後も比較的強い浮力を保つマットのほうがよいでしょう)。

他方、内水では、厳密な回収除去が要求されるのが通常です(各種用水に利用されるうえ、生活圏に近いので悪臭や水質悪化が問題となるからです)。また流れや風に押されてオイルマットの上流側に油が寄せられることが多いので、そこにオイルマットを浮かべておけば油を効率的に回収できますが、その場合、オイルマット自体の流失(二次汚染)に特に気を付ける必要があります。
従って、オイルフェンスを展張したら、その上流側には浮力の強いセッターマットをまず浮かべます。これは油回収作業の最終段階までなるべく取り替えません。(オイルマットの交換作業をオイルフェンスのそばで行うと、水面が揺れて油滴がオイルフェンスを潜りぬけてしまうからです。)
次にセッターマットの上流側にバルクマットを浮かべます。これは油を吸着したならなるべくすぐに取り換えます(ただし 比較的浮力の強いタイプならば ある程度は時間に余裕をもって作業できます。)
油をおおかた回収し終わると後に薄油膜が残ります。その段階になったら、一旦すべてのオイルマットを引き上げて、新しいセッターマットを投入し、残った薄油膜を吸着させます。

下記は、セッターマットとして要求される性能(精密吸着力と浮力)を縦軸と横軸にとり、そこに弊社品をあてはめた表です。

セッターマットの代表例がスミレイオイルマットです。

スミレイオイルマット

それ以外はバルクマットですが、バルクマットは一般に原料の繊維が細いほど、マットの厚みがあるほど吸着量も浮力も向上します。従って、水面の油をたくさん吸い取らせたいときは、繊維がなるべく細いものや、 厚みがあるものを選ぶとよいでしょう。他方、それほど油量が多くない時は1枚あたり(あるいは面積あたり)のコストのほうを重視してよいこともあります。弊社では、それらのニーズごとにバルクマットを選定して御提案いたします。

パフィンオイルマット スミックスオイルハンター カタログダウンロード

コラム

「型式承認」を通ったオイルマットでないと海では使えない、というのは本当ですか?

確かに オイルマットについては海洋汚染防止法に定められた「型式承認」という制度があります。しかし、この「型式承認」というのは、大型の油輸送船、その船を係留する場所ないし貯油施設に対しては一定数量のオイルマットを備蓄する義務が「海洋汚染防止法」により課されているところ、その備蓄すべきオイルマットの性能・性状を定めた制度にすぎません。
ですから、上記以外の施設や人が海洋の油濁を防ぐためにオイルマットを使用する場合は、型式承認に通ったオイルマットでなくてもかまわないのです。
確かに、海洋は波が荒いなどの特色があるので、頑丈さをテストされている型式承認品が役立つことも多いのですが、型式承認品を使っても役立たない場面(「沈む」「油膜が取れない」などの場合)は、型式承認のない別タイプのオイルマットを使うという発想も必要でしょう。

2.機械的な吸引回収

スピーディに油を回収したいときや、油が細かな砂泥や有機質と混合してムース状態になってしまいオイルマットではなかなか吸着できないようなときには、機械的にスキマーで吸引させることもあります。
ただこれまでのスキマーは、精密に油を回収しようとすると水も多く吸引し、吸引する水の量を減らそうとすると油を吸い残す、という二律背反に悩んでおりました。
弊社では、水面の油分を少量の水と一緒に精密に吸引回収する独自の「バルカスキマー」を開発しました。また、事故現場で油濁水から油のみを除去してきれいにした水をその場で放流できるようにする可搬式吸着塔「コプラ オイルフィルター」も開発しました。
販売可能となりましたら、このホームページでも御紹介いたします。

3.ゲル化剤による固化と固化した油の回収

油を化学的に固化する粉末ゲル化剤(石油を原料とするポリアクリル酸など)は、主に海洋油濁事故で、油の回収と火災防止の目的で使われることがあります。
但し、油の回収精度が高くなく、薄い油膜までは回収することはできず、ゲル化剤じたいの水没・拡散・流下もあるので、異物混入を嫌う河川湖沼などの内水での油濁事故においては、あまり使用されていません。

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